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始まりは終わりの始まり(後編) ◆EA1tgeYbP. ◇ ――しばしの沈黙。 自分を残して誰もいなくなった玉座の間の中でルルーシュは視線を落とした後、手元にあるものを見て小さく笑みを浮かべる。 状況は大きく動いた。ろくな予測も立てることはできないが、この状態でアンチ=スパイラルとの交渉はやる他ないという覚悟は決まった。 ――ならば、アンチ=スパイラルとの交渉をその主な目的としてきた彼ら7人の同志達、その目的の第一段階が果たされることがほぼ確定した今、 ギアスの制御下にあるチミルフを除いた他5名の動向、とりわけグアームに関しては確実に把握しておく必要がある。 東方不敗やニコラス・D・ウルフウッドに関しても警戒をする必要はある。 だが、仮に何か企んでいるとしてもこの両名がルルーシュが知り得ぬ事実を知っている可能性は低い。 そして知り得る情報から動きを予測、知恵比べならばこの二人に負けることはない。 だが、情報という見地から見て6人中唯一ルルーシュを上回っているのがグアームだ。 ルルーシュの持つ情報のほとんどはグアームから与えられたものだ。もちろん、状況が状況だけに与えられた情報に嘘があるとまでは思わない。 しかし与えられた情報が全てではない。隠されている情報があることもまた間違いない。 そして今、ルルーシュの手元にはつい先ほど機械から引き出したデータ、とある資料がある。 それはこの月そのものに偽装されている戦艦、カテドラル・テラのものだった。 グアーム、そしてアディーネの二人は未だ隠しおおせているつもりなのかもしれないが、 こまめに全員の所在をチェックしていたルルーシュにとって、 アディーネが見せた動き――突然単独で無意味なエリアへと移動したこと――からカテドラル・テラのことを掴むのはそれほど難しいことではなかった。 (事を成す前から逃げ出す算段か……ふっ、その用心深さは認めてやらんでもない…… が、死を覚悟して事を成すという気概で挑まねばならないこともあるということを学んでおくべきだったなグアームよ) 心の内においてルルーシュはグアームを冷笑する。 (所詮は獣か。成すべきことを成さずに逃げ出した後、一体貴様はどう生きるつもりなのだグアームよ) 自分は違う。ナナリーが平和に笑って過ごせる世界を作るため、そして皇帝に復讐するためならばその他全てのものを犠牲にするだけの覚悟がある。 そう、ナナリーが笑って暮らせる世界を作るためならどんなものをも犠牲にするはずだった。 彼の作る世界には欠かせないはずだった少年スザク。それを奪ったヴィラルは先ほど彼自身が言った通り一枚きりの手札であるが故に今はまだ手を出せない。 しかし、他の天元突破覚醒を果たしたものが現れれば、その時はアンチ=スパイラルへの贄として彼自身の手でヴィラルを…… どの道、すでにヴィラルの運命は決まっている。 アンチ=スパイラルとしてもスパイラル=ネメシスを引き起こしかねない存在となったヴィラルを生かしておくだけの理由はない。 つまり、後はそれ、ヴィラルの運命に幕を下ろすのを果たすのが自分か、アンチ=スパイラルかの違いでしかない。 とはいえできるものならば彼自身の手で始末をつけたいのもまた事実だ。 (ウルフウッド……貴様には期待しているぞ) 闇の中、少年はただ嗤う。 ◇ 「……ふっ」 「なんだい急に、気持ち悪いねえ」 通路を共に歩くアディーネとグアーム。 そのグアームが突然浮かべた笑いに、言葉通りアディーネは心底気持ち悪そうな表情を浮かべた。 「いや何、少々思い出したことがあっての。まあ、おぬしが気にするようなことではない。それよりもアディーネ、アレのほうはどうなっている?」 「……起動するだけなら今すぐにでも。ただ、あいつに気がつかれないように起動まで持っていくには正直もう少し時間が欲しいね」 アディーネは答える。 アレ、すなわち戦艦カテドラル・テラ。 実際のところその起動だけならばそれほど時間はかからない。だが、そのシステムの一部はこの会場の運営に利用されているのだ。 具体的にはこのテッペリンから会場内への転移システム、図書館に隠してある螺旋界認識転移システム。 これらのシステムの制御の大元はカテドラル・テラの制御システムに依存している。 よってルルーシュに気がつかれないようにカテドラル・テラを起動しようと思えば、 それら複数のプログラムから一気にシステムの制御を抜き取り、起動まで持っていく必要がある。 「なるほどな、では引き続き任せてよいか」 「ああ」 それだけ聞くとグアームはアディーネと別れ格納庫、そこに置いてある彼専用ガンメンたるゲンバーの元へと向かう。 「……思惑通り、そうお主は思っておるのかもしれんの?」 アディーネと別れ一人になったグアームはにいと、その口を大きく歪ませる。その口から出てくるのはルルーシュへの嘲りの言葉だ。 「じゃがのう……アンチ=スパイラル。アレはそんなに生易しいものではないぞ? お主の頭では及びもつかぬ相手というものも世の中には存在するのじゃ。 確かに天元突破者を作り出すというお主の考えは一応今のところ成功しておる。じゃが、あれを相手に圧力をかけるなど言うのは少々身の程を知らなさ過ぎじゃ」 今となってはただ一人、アンチ=スパイラルのことを知るが故に、グアームはロージェノムが逃げ出した気持ちも理解できないわけではない。 彼がロージェノムに怒りを覚えるのはその逃げ出したということ、それ自体ではなく、彼を置いて自分ひとりで逃げ出したこと、そこに尽きる。 「ルルーシュよ、お主はお主でせいぜいあがくが良い。ワシは一足先に逃げ出させてもらうがの」 ヴィラルが覚醒したことはグアームにとってはある意味幸運であり、ある意味不幸なことではあった。 幸運な点はヴィラルへの復讐をルルーシュが諦めていないこと。 本人は気が付いていないかもしれないが第二、第三の天元突破者を作ろうという考えは、当初ルルーシュから聞かされた考えからすれば余分だ。 ヴィラルへの復讐心がある限り、彼の目は曇りつづける。 不幸な点はヴィラルをグアームが利用できるだけの余地がゼロになったという点だ。 「まったく……新たに二人も都合つけなければならんとはやっかいじゃのう」 人数の都合。それこそがグアームがルルーシュに隠している最大の秘密だ。 戦艦カテドラル・テラ。最悪、その存在まではルルーシュにばれても構わない。その真の機能を悟られることさえなければ。 ルル―シュは単にグアームたちが逃走の準備をしているだけと考えるに違いない。 だが、その真の機能までは決して彼には知られてはならない。 もし、ルルーシュにカテドラル・テラの真の機能がばれてしまうようなことがあれば、この状況の全てがひっくり返りかねない。 それはすなわち、カテドラル・テラに搭載されている螺旋界認識転移システム。 その最初の目的は、螺旋の戦士達が別次元に潜むアンチ=スパイラルを討つ、その為に搭載されたものだったのだ。 ――これはつまり。 十分な螺旋力さえあれば、カテドラル・テラによって別次元に移動できるということだ。 とはいえ、生半可な螺旋力では別次元に移動することは不可能だ。 目安として最低でも図書館の封印を破るほどの量、平均的な螺旋戦士4人分の螺旋力が必要となる。 ……逆にいうならそれだけの数の螺旋覚醒者さえいれば、元の世界に帰還することも、ロージェノムの後を追いかけることも不可能ではない。 (ワシは一言も嘘をついておらんぞ?) グアームは笑う。 確かにルルーシュに協力を要請した際彼に語った、ロージェノムが次元移動に必要な道具を持って行ったために彼を追いかけることは不可能という話は嘘ではない。 なにせ獣人には螺旋力がないのだから。 螺旋界認識転移システムが残されていようともそれは彼らにとってはロージェノムを追う役には立たない。 ロージェノムが奪っていったのはガンメンに搭載されているものと同じく、獣人でも扱える電力で作動する転移装置の類だった。 そしてもう一つ、ルルーシュによってアンチ=スパイラルの動向が明らかになるまでうかつに動くこともできなかった。 ロージェノムの逃亡が発覚した直後、グアームが適当な螺旋覚醒者を会場内から回収せずに、 ルルーシュ達少数をアドバイザーにするという方法をとったのも、こちらが下手に動けばアンチ=スパイラルに襲撃される恐れがあったためだ。 (せいぜいお主はアンチ=スパイラルを相手に好き勝手やるが良い) だが今や、それらの問題は解決された。 今のルルーシュにとっての関心事はアンチ=スパイラルとヴィラルに向いている。 そしてアンチ=スパイラルも単なる螺旋覚醒者程度を引き連れて逃亡するグアームにはそれほどの注意を払いはすまい。 どれほど上手く行くかまではわからないが、天元突破覚醒者が出てくるであろう会場内にその注意は向けられるはずだ。 そう、囮としてこれ以上のものはない。 すなわち、これ以上ないほどに上出来な、脱出と復讐のチャンスが回ってきたのが今なのだ。 (……あまりやりすぎてくれるなよ?) ウルフウッドへ胸中でそっと呟く。 彼が襲撃するのは後々彼の手駒となりうるもの達だ。 適当に死にかけたところでルルーシュにばれないように回収して螺旋力を搾り出すエンジンとなってもらわねば困る。 それともあるいは…… 天元突破覚醒者の可能性があるものとしてルルーシュが纏め上げた、残る参加者のデータ。 その中の螺旋遺伝子の覚醒を果たした何人かをグアームは思い出す。 カミナやガッシュ・ベルといったものたちは強い螺旋力とは裏腹に甘く、愚かだ。 小早川ゆたかや菫川ねねねといったもの達はその螺旋力と裏腹にその戦闘能力は脆弱だ。 こういった参加者を利用することもあるかもしれない。 思惑を胸に獣は進む。 己のために他の全てを犠牲にして。 ◇ (……そういうことか) 目の前を歩いていくグアームを前に東方不敗は心の中で納得する。 ……人であれ、獣であれ、その瞳に映っていようともまるで気配を発しないものは意識の中に入ってこない。 俗に隠行と呼ばれる技術によって東方不敗はグアームの傍らに潜む。 先の会談の最中から感じ取っていたグアームの余裕。 それが気になった東方不敗はこっそりとグアームの後を追尾し、その余裕の正体に至る。 (おそらくは宇宙船か、何か……アンチ=スパイラルの襲撃をも想定済みだとするならば宇宙戦艦とでも言ったところか) そのようなものがあると知れたのは二重に僥倖だ。 一つは、東方不敗自らがアンチ=スパイラルの元に行くことができる手段の確保。 そしてもう一つ。 (ふむ……こやつが戦艦の起動をも視野に入れておるならば、ワシもある程度動く準備をしておかなくてはならんな) このままルルーシュの指示に従ったままアンチ=スパイラルとの交渉を待つ、などという甘い考えでは、 気がついたときにはこの自分さえもが彼らの攻撃目標へと成り果てているだろうことは十分考えられる。 (どうせお主もそうなのであろう?) 目の前を歩く獣人に東方不敗は届かぬ言葉を投げつける。 目の前の獣人がアディーネ以外他の誰にも宇宙船艦のことを語ってはいない以上、 いざという時、自分達だけが逃げ出すつもり、自分のために他者を利用し使い捨てるつもりでいることは明白だ。 ならば何を遠慮することがあろうか。 他者を利用しようとするものは己もまた利用されるものであると知るが良い。 交渉に使える天元突破者とアンチ=スパイラルの元へ移動するだけの手段。 その両方が今や東方不敗の間近に転がっている。 (あと少し、もう少しだ) 目指すものはもう少し。 東方不敗はグアームから距離をとる。 (お主は破滅の道を行け。ワシはワシの道を行く) 最後にそう呟くと東方不敗もまた自らの道を歩みだす。 その先にある未来を見据えて。 ◇ (……なあ、トンガリ。おどれは一体どう思っとるんや) 心の中で、ウルフウッドはヴァッシュへと問い掛ける。 先の天元突破の場においての構図、対主催陣とヴィラル、シャマル達との戦いはウルフウッドにとっては特別な意味合いがあった。 片や元獣人と元戦闘プログラム。 片や異能を持ちこそすれどただの人間。 そして ――愛こそ至高。愛こそ……天下だぁあああああああ!! 愛を叫ぶモノ達と ――バオウ・ザケルガァアアアアアアアアアア!! 容易く相手、いや全てを破壊し尽くすだけの力を持ちながらも、他者の命は奪わずに戦闘能力を奪い去るだけに留めた甘い者達。 それら全ての要素がウルフウッドの中で一人の男のイメージと結びつく。 ――ラーヴ アーンド ピース!! 争いに満ちたあの星でそんなふざけた言葉を叫びながら数多の争いを何とかして止めようと首を突っ込み続けた男。 話をするために、その手に敢えて銃を取りながらも、決して誰一人としてその手で命を奪おうとしなかった男。 ヴァッシュ・ザ・スタンピード。 ヒトではない「プラント」の人型の突然変異種という存在でありながら、誰よりも人間らしくあろうとし、その通りに生きてきた男。 結局人間らしくあろうとした彼はこの殺し合いの舞台のさなかにその命を失った。 そして、彼の代わりにこの殺し合いの場において愛を叫び、そのために平気で他者を傷つける人でなき者達がこの舞台における切り札、その輝きを手に入れた。 「なあ、トンガリ。おどれの代わりにワイが確かめたるわ。おどれが本当に正しかったのか。おどれが本当はどんな生き方をするべきだったのかをな」 ヴィラルとシャマルの回収に成功した後、会場内に残されるのは基本的には平和を貫く人間達のみだと考えて良い。 他者を傷つけることがあっても命を奪うことを避けようとする彼らの生き方は、ある意味ヴァッシュ・ザ・スタンピードのそれと変わらない。 もし仮に残された者たちがウルフウッドに敗北、あるいは勝利したとしても、 彼らが天元突破の輝きを持ち得ないということになれば、それはヴァッシュの生き方が誤りだったことの証明。 あの男がもっと傲慢に自分のために力を振るってさえいれば、より早くこの殺し合いを止めることも可能だったということ。 結果的により多くの命を救うことができたということだ。 (そん時はあの世のあいつを思いっきり嘲笑ったる。おどれの人生はこんな下らんやり直しをさせられたワイなんかよりももっと下らんものやったんや) そして、万が一にも残された者たちが新たな輝きを手に入れるというのであれば、それはウルフウッドの敗北だ。 (そうやな、そん時はおどれに思いっきり謝った後、おどれみたくラーブアーンドピースとか叫びながら争いを止めるために戦ってやってもええわ。誰一人として殺さんとな) ――そうして、男は再び会場へと向かう準備を整える。 男が背負うは罪の証たる十字架。 最強の個人用兵装バニッシャーを背負って男は進む。 その先に待つのは新たな血の道かあるいは―― 【王都テッペリン/二日目/午後(実験場内時間)】 【チーム:七人の同志】 (ルルーシュ、チミルフ、アディーネ、シトマンドラ、グアーム、ウルフウッド、東方不敗) [共通方針]:各々の悲願を成就させるため、アンチ=スパイラル降臨の儀式を完遂する。内容は以下の通り。 1:真なる螺旋力覚醒者(天元突破)をアンチ=スパイラルを誘き出す餌とする。 2:ルルーシュの指揮の下、頃合を見計らって『試練』となる戦力を投入。参加者たちに意図的に逆境を与え、強引にでも螺旋力の覚醒を促す。 3:投入する戦力は現在のところチミルフ、ウルフウッド、東方不敗の三名を予定。生存者たちの状況により随時対応。 4:試練を与える前に真なる螺旋力者が現れた場合、また別途にアンチ=スパイラルとの接触の機会が訪れた場合には、逐一対応。 5:同志七人の立場は皆対等であり、ルルーシュとチミルフを除いて支配従属の関係にはならない。 6:アンチ=スパイラルとの接触に成功した後は、ルルーシュが交渉を試み、その結果によって各自行動。 [備考] ※その他、詳細な計画の内容は「天のさだめを誰が知るⅢ」参照。 ※ルルーシュの推測を含めた実験の全容については、「天のさだめを誰が知るⅡ」「天のさだめを誰が知るⅣ」参照。 ※多元宇宙を渡る術は全て螺旋王が持ち去りましたが、資料や実験を進める上で必要不可欠な設備、各世界から強奪した道具などは残っています。 ※ルルーシュら実験に参加していた四名は、テッペリンの設備で体力と怪我を回復しました。 ※会場の空間凍結の解除のタイミング、ならびにチミルフ、グアーム、東方不敗がいつ会場内に進入するかは後続の書き手にお任せします。 【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】 [状態]:首輪解除、健康 [装備]:ベレッタM92(残弾11/15)@カウボーイビバップ、ゼロのコスチューム一式@コードギアス 反逆のルルーシュ [道具]:支給品一式(-メモ)、メロン×10個 、ノートパソコン(バッテリー残り三時間)@現実、消防服 アンチ・シズマ管@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-、予備マガジン(9mmパラベラム弾)x1 毒入りカプセル×1@金田一少年の事件簿、支給品一式(一食分消費)、ボン太君のぬいぐるみ@らき☆すた ジャン・ハボックの煙草(残り15本)@鋼の錬金術師 『フルメタル・パニック!』全巻セット@らき☆すた(『戦うボーイ・ミーツ・ガール』はフォルゴレのサイン付き) 『イリヤスフィール・フォン・アインツベルンに捧ぐ』@アニロワ2nd オリジナル 参加者詳細名簿(ルルのページ欠損)、詳細名簿+(読子、アニタ、ルルのページ欠損) 支給品リスト(ゼロの仮面とマント欠損)、考察メモ、警戒者リスト、ダイヤグラムのコピー、携帯電話@アニロワ2ndオリジナル ゼロの仮面@コードギアス 反逆のルルーシュ、ゼロのマント@コードギアス 反逆のルルーシュ [思考] 基本:何を代償にしてでもナナリーの下に帰る。七人の同志の一人として行動。 1:ヴィラルの回収を待ってアンチ=スパイラルとの交渉を開始する。 2:それまで、手持ちの情報を再度洗い直す。 3:他の同志たちの行動にも目を配る。特にウルフウッド、東方不敗、グアームを要注意。 4:アンチ=スパイラルのより詳細な情報が欲しい。 5:謎のハッキングについて警戒する。 [備考] ※螺旋王の残した資料から、多元宇宙や実験の全容(一部推測によるものを含む)を理解しました。 ※謎のハッキングについては外伝「かつてあったエクソダス」参照。 ※カテドラル・テラの存在を知りました 【怒涛のチミルフ@天元突破グレンラガン】 [状態]:敗北感の克服による強い使命感、ギアス(忠誠を誓う相手の書き換え) [装備]:愛用の巨大ハンマー@天元突破グレンラガン [道具]:デイパック、支給品一式、ファウードの回復液(500ml×1)@金色のガッシュベル!! ビャコウ@天元突破グレンラガン(右脚部小破、コクピットハッチ全損、稼動には支障なし) [思考] 基本A:獣人以外を最終的には皆殺しにする上で、ニンゲンの持つ強さの本質を理解する。 B:王であるルルーシュの命に従い、ルルーシュの願いを叶える。 0:ルルーシュの臣下として務めを果たす。七人の同志の一人として行動。 1:ルルーシュの命に従い会場内からヴィラル、シャマル、グレンラガンを回収。 2:螺旋王の第一王女、ニアに対する強い興味。 3:強者との戦いの渇望(東方不敗、ギルガメッシュ(未確認)は特に優先したい)。 [備考] ※ヴィラルには違う世界の存在について話していません。同じ世界のチミルフのフリをしています。 ※シャマルがヴィラルを手玉に取っていないか疑っています。 ※チミルフがヴィラルと同じように螺旋王から改造(人間に近い状態や、識字能力)を受けているのかはわかりません。 ※ダイグレンを螺旋王の手によって改修されたダイガンザンだと思っています。 ※螺旋王から、会場にある施設の幾つかについて知識を得ているようです。 ※『怒涛』の二つ名とニンゲンを侮る慢心を捨て、NEWチミルフ気分です。 ※自分なりの解釈で、ニンゲンの持つ螺旋の力への関心を抱きました。ニンゲンへの積極的交戦より接触、力の本質を見定めたがっています。(ただし手段は問わない) ※『忠誠を誓うべき相手は螺旋王ではなく、ルルーシュである』という認識の書き換えをギアスで受けました。 螺旋王に対して抱いていた忠誠が全てルルーシュに向きます。武人たる彼は自害しろとルルーシュに言われればするでしょう。 獣人としての誇りは持っていますが、螺旋王に対する忠誠心は失っています。 ※夜なのに行動が出来ることについてはあまり考えていなません(夜行性の獣人もいるため)。 【流麗のアディーネ@天元突破グレンラガン】 [状態]:健康、螺旋王に対する強い憎悪、ルルーシュに対する不信 [装備]:不明 [道具]:不明 [思考] 基本:七人の同志の一人として行動。 1:カテドラル・テラを調査する 2:ルルーシュのギアスに対して警戒する 【神速のシトマンドラ@天元突破グレンラガン】 [状態]:健康、螺旋王に対する強い憎悪 [装備]:不明 [道具]:不明 [思考] 基本:七人の同志の一人として行動。 1:任務に戻る。 2:ウルフウッドや東方不敗が情報を欲したとしても、ルルーシュのギアスに関しては悟られないよう根回しする。 3:螺旋王とルルーシュ、どちらが自分の"王"に相応しいか考える。 【不動のグアーム@天元突破グレンラガン】 [状態]:健康、螺旋王に対する強い憎悪、ルルーシュに対する不信 [装備]:不明 [道具]:不明 [思考] 基本:七人の同志の一人として行動。 1:自身の生存を最優先とする 2:ルルーシュの行動を手伝うと見せかけ、コントロールする。 3:カテドラル・テラのエンジンとなりうる螺旋覚醒者を見繕う。 【ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン】 [状態]:首輪解除、軽いイライラ、聖杯の泥、自罰的傾向、螺旋力覚醒 [装備]:アゾット剣@Fate/stay night、デザートイーグル(残弾:8/8発)@現実(予備マガジン×1) パニッシャー(重機関銃残弾100%/ロケットランチャー100%)@トライガン [道具]:支給品一式、ヴァッシュ・ザ・スタンピードの手配書@トライガン、予備弾セット@アニロワ2ndオリジナル [思考] 基本思考:自分を甦らせたことを“無し”にしようとする神に復讐する(①絶対に死なない②外道の道をあえて進む)。 人間を“試し”、ヴァッシュへの感情を整理する。七人の同志の一人として行動。 1:もう少しぶらぶらする。 2:試練役を買って出る意志はある。が、もやしっ子の言いなりになるんは癪や。 3:売られた喧嘩は買うが自分の生存を最優先。チミルフ含め、他者は適当に利用して適当に裏切る。 4:神への復讐の一環として、殺人も続行。女子供にも容赦はしない。迷いもない。 5:自分の手でゲームを終わらせたいが、無謀なことはしない。 6:ヴァッシュに対して深い■■■。 7:ヴァッシュの遺志を継ぐ者や、シモンなど自分が殺した人間の関係者に倒されるなら本望(本人は気付いていません)。 8:チミルフに軽く失望。 9:生きる。 [備考] ※迷いは完全に断ち切りました。 ※ヴッシュ・ザ・スタンピードへの思いは―――― ※シータを槍(ストラーダ)、鎌鼬(ルフトメッサー)、高速移動、ロボットの使い手と認識しました。 ※言峰の言葉により感情の波が一定していません。躁鬱的な傾向が見られます。 ※シータのロボットは飛行、レーザー機能持ちであることを確認。 ※螺旋界認識転移システムの場所と効果を理解しました。 ※五回目の放送を聞き逃しました。 ※チミルフから螺旋王の目的やアンチスパイラルに関する情報を聞きました。 ※螺旋力覚醒 ※ルルーシュの指示だと、ウルフウッド投入のタイミングはチミルフ達が回収に成功してから少し後です。 しかしこのタイミングをウルフウッドが守るかどうかはわかりません。 【東方不敗@機動武闘伝Gガンダム】 [状態]:首輪解除、螺旋力覚醒、疲労(小)、火傷 [装備]:天の鎖(エルキドゥ)@Fate/stay night、ボロボロのマント、マスタークロス@機動武闘伝Gガンダム [道具]:ロージェノムのコアドリル×1@天元突破グレンラガン、ファウードの回復液(500ml×1)@金色のガッシュベル!! 風雲再起(首輪解除)@機動武闘伝Gガンダム、ゼロの衣装(仮面とマントなし)@コードギアス 反逆のルルーシュ [思考]: 基本方針:現世へ帰り地球人類抹殺を果たす。アンチ=スパイラルと接触、力を貸す。七人の同志の一人として行動。 0:アンチ=スパイラルの力を得たい。 1:マスターガンダムの調子を見るついでに、傷を癒す。 2:アンチ=スパイラルとの接触を図るため、ルルーシュに賛同。が、完全には信用しない。 3:アンチ=スパイラルを初め、多元宇宙や他の参加者、実験の全容などの情報を入手したい。 4:ルルーシュがチミルフを手懐けられた理由について考える。 5:ドモンと正真正銘の真剣勝負がしたい。 6:しかし、ここに居るドモンが本当に自分の知るドモンか疑問。 7:ジン、ギルガメッシュ、カミナ、ガッシュを特に危険視。 8:カミナに…… [備考] ※クロスミラージュの多元宇宙説を知りました。ドモンが別世界の住人である可能性を懸念しています。 ※ニアが螺旋王に通じていると思っています。 ※クロスミラージュがトランシーバーのようなもので、遠隔地から声を飛ばしているものと思っています。 ※螺旋遺伝子とは、『なんらかの要因』で覚醒する力だと思っています。 『なんらかの要因』は火事場の馬鹿力であると推測しました。 Dボゥイのパワーアップを螺旋遺伝子によるものだと結論付けました。 ※自分自身が螺旋力に覚醒したこと、及び、魔力の代用としての螺旋力の運用に気付きました。 ※カミナを非常に気に入ったようです。 ※チミルフから螺旋王の目的やアンチスパイラルについての情報を入手しました。 ※計画に参加する上で、多元宇宙や実験に関する最低限の情報を入手しました。 ※治療のせいで病状が加速していることが判明しました ※カテドラル・テラの存在を察知しました。(細かい機能などに関しては未だ理解していません) ◇ 彼、彼ら、それ、それら。 その存在を指し示すのにこれらの呼び方は全てが正しく、全てが間違っている。 アンチ=スパイラル、螺旋族からはそう呼ばれる存在。 元は螺旋の民でありながらも、螺旋の力の進化の果てにある破滅を知って自らの進化、肉体をさえをも封印し、他の螺旋族を統制し続ける道を選んだ存在。 彼はアンチ=スパイラルというただ一つの思念体であり、それらはアンチ=スパイラルという名の螺旋の民を管理するためのプログラムの集合体だ。 彼らは進化の先にある破滅、スパイラル=ネメシスからこの宇宙を守るという総意であり、それはそのための単一的なプログラムだ。 そうして今、便宜上彼と呼ぶその存在は、とある箱庭の様子を注視する。 螺旋族の元戦士、ロージェノムによって数多くの世界から螺旋遺伝子を持つ者どもを集めて行われた殺し合い。 無数の多元世界の中においてただ一つアンチ=スパイラルを打ち破った存在、天元突破覚醒者を自ら作り出さんとしたその試みは、 ロージェノムの逃走によってその幕を下ろした……はずだった。 「……愚かなる螺旋の者達よ、何故に螺旋の進化を促す? 何故自ら滅びへの道を歩む?」 事実、アンチ=スパイラルとしてはロージェノムが逃亡した時点で、 かの箱庭に残された螺旋の者に対しての興味はほとんど失っていたのだ。 力も数も足りぬ螺旋族なぞ、わざわざ滅ぼしに行くまでもない。 そしてそれは逃げ出したロージェノムに対しても同様だ。 無駄な試みで螺旋遺伝子を持つ者を無駄に使い潰すだけの存在など、ほんのわずかの恐喝を加えて、後は放置しておいてもかまわない。 だが、ロージェノムが逃亡したあと、わずかな時を経て殺し合いという名の実験は再開された。 ――そして。 「……まさかあのような試みで真なる螺旋覚醒が引き起こせるとはな」 驚きとわずかの哀れみを込めてアンチ=スパイラルは呟く。 「ほとほと理解に困る存在だよ、螺旋族というものはな」 放置しておいて構わなかったはずの実験は、真の覚醒を果たしうることが判明した時点で一気にその危険度は跳ね上がった。 だが箱庭にいる者達、その数の少なさゆえにあの世界に埋め込んである殲滅プログラムは作動しない。 つまり、あの螺旋覚醒者はアンチ=スパイラル自らが滅ぼさなければならないということだ。 無論、その様子は箱庭に残されし螺旋族どもに見せつける。 それによって絶望を引き起こし箱庭の中の螺旋の力を削ぐためだ。 そして、逃げ出したロージェノム。 彼自身は未だ気がついてはいないだろうが、螺旋覚醒を果たすだけの舞台を作り出すことが可能な彼を放置しておくこともできなくなった。 それはあの実験を続けるもの達も同様だ。 いかなる意図があってロージェノムの実験の後を引き継いだのかまでは理解できないが、それでも螺旋覚醒を引き起こすすべを知る者を生かしておくのは危険すぎる。 いや、ロージェノムの逃亡後螺旋覚醒が果たされたことを鑑みれば、その危険度は未だに無知なるロージェノムより高いとさえ言えよう。 ――だが、動くにはまだ早い。最後に後一つだけ確かめることがある。 「はたしてあの螺旋覚醒者は箱庭から抜け出せるのかな?」 真なる螺旋覚醒を果たした箱庭の螺旋族。 だが、その覚醒にはあの特別な箱庭の空間、螺旋遺伝子の覚醒を促す特殊なフィールドもその要因となっている。 わかりやすく言ってしまえば、子供が自転車に乗るときに補助輪を付けて乗っているのと同じ事だ。 だが、真なる螺旋覚醒を果たし、そのまま箱庭の外に出るということはその補助輪を外すということに他ならない。 ただの螺旋遺伝子の覚醒というだけならば目覚めた螺旋遺伝子のバランスはそれほど崩れることはないだろう。 だが、真なる螺旋覚醒ともなれば話は別だ。 その圧倒的なパワー。普通の螺旋覚醒とは比較にならないそれを御し損ねれば、それはスパイラル=ネメシスには及ばぬとはいえ大きな破壊を引き起こす。 その破壊に螺旋覚醒者の身体自体も耐えられまい。 アンチ=スパイラルの見立てではその可能性はおよそ5割。 「……さて、どうなるかな?」 ロージェノムによって行われた今回の実験。 その真なる観察者としてアンチ=スパイラルはその結果が導き出されるのを待ち続ける。 【アンチ=スパイラル@天元突破グレンラガン】 [状態]:??? [装備]:??? [道具]:??? [目的]スパイラル=ネメシスをくい止める。 0:真の螺旋覚醒者が箱庭から無事に出てこれるかどうか見極める。 1:出てこれるようなら実験を続けた者達ごと攻撃を加える。その際そのシーンを箱庭に残る者たちに見せつけることによって彼らの絶望を誘う。 2:事が終わったらロージェノムを補足する。 3:一応、箱庭に残る者達の監視は続ける。 時系列順に読む Back 始まりは終わりの始まり(前編) Next HAPPY END(1) 投下順に読む Back 始まりは終わりの始まり(前編) Next HAPPY END(1) 284 始まりは終わりの始まり(前編) ルルーシュ・ランペルージ 285 HAPPY END(10) 284 始まりは終わりの始まり(前編) ニコラス・D・ウルフウッド 285 HAPPY END(10) 284 始まりは終わりの始まり(前編) 東方不敗 285 HAPPY END(1) 284 始まりは終わりの始まり(前編) チミルフ 285 HAPPY END(1) 284 始まりは終わりの始まり(前編) 不動のグアーム 285 HAPPY END(1) 284 始まりは終わりの始まり(前編) 流麗のアディーネ 285 HAPPY END(10) 284 始まりは終わりの始まり(前編) 神速のシトマンドラ 285 HAPPY END(10) アンチ=スパイラル 285 HAPPY END(20)
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プロローグ・終わりの始まり 「あれ…?ここは…?」 柳茜が目を醒ますと、そこには沢山の見知った顔が倒れていた。 今まで幾度となく共に戦ったハンター達。 そして、辺りを見渡すと宇宙空間のような場所に、自分達は石造りのような場所にいた。 ユグドラシルで見た巨大な大樹と、その周りには巨大な湖がある。 ―久しいな、人間よ― 「!?」 その一言により、周りの者も目覚め始めた。 茜は、驚きの表情で眼前に聳える竜、エストレアを見る。 「えーっと…」 まず甚目寺禅次郎を探そうとした。 エストレアが用があるとすれば、彼の竜に見いだされた禅次郎だ。 辺りに沢山のハンターがいる事を見れば、茜も大勢の中の一人に過ぎないのだろう。 ―今回は貴様だ、柳茜― 「え?」 ―終わりが始まろうとしている。滅びの星、ハミルトン。魔王竜アドラメレクのみが起動できる、いち文明を滅ぼすことができる魔法― 「ちょ、ちょっと待ってよ!いきなりユグドラシルに連れてこられて、突然そんな事を言われても…」 ―心せよ、柳茜。アドラメレクに見出されし竜の戦士よ。これより、アドラメレクに代わり最終試練を開始すると宣言させてもらう― 状況を少しずつ呑みこんでいく茜。 ユグドラシル、とは言ったが、厳密にいえばここはユグドラシルではない。 ユグドラシルの5層に似てはいるが、全く別の世界だ。 何よりここが始まり。 巨大な石造りの階段があり、遥か上の層のような場所は、広大な翡翠でできたエリアとなっていた。 ―あれはほんの一角。第一階層は四季の階層となる。言うよりも行けばわかるだろう― 「…」 色々聞きたいこともあったが、確かに実際に見てみない事にはどうにもならない。 仲間に声をかけ、第一階層、四季の階層と呼ばれる場所の探索を始めるようとした時だった。 「あれ?皆?」 「…おい、どうなってんだ?ラウム」 「フェルゼちゃんっ!ハナちゃんとかみんな消えちゃったのっ~!」 いつの間にか、茜と白神凪、福良練の3人しか階段を上がってきていない。 困惑する3人に、エストレアの声が聞こえる。 ―アドラメレクにより、階層に挑める人数は決められている。そして、悪魔共は既にいない― 「そんなぁ…またせっかくフェルゼちゃんとお話しできると思ったのに…」 「いや、待て福良。この世界のどこかに、感じねぇか?ラウムの気配は、遠くだが感じるぞ」 「悪魔はよくわかんないけど…とにかく、挑めるメンバーは決められてるってことね。いつもこの3人で挑まなきゃならないってことはないんでしょ?」 ―然り。そして、貴様達と縁のある者達が、悪魔に囚われの身となっている。その者達は、エリア攻略の手助けとなるだろう― エストレアの声がやむと、8個の宝玉が3人の手に入っていた。 「これは…」 ―悪魔に囚われた者達の魂。我がいる拠点に戻れば、解放してやろう― 「…とにかく、一度戻った方が良さそうだね。悪魔の力は使えそう?」 「ああ、そこは問題ない。中にいたラウムが、力だけ残して消えたような感覚だな」 「じゃ、問題ないね。戻るよ!」 ☆☆☆ 3人が戻ると、そこには消えたはずのハンター達が戻ってきていた。 エストレアのいう事は本当のようで、一度に向かえる人数が制限されているようだ。 ―では解放を行う― エストレアの一つ目が光ると、8つの宝玉は壊れ辺りが光に包まれる。 そして、そこには佐治宗一郎、上条森羅、城ヶ崎憲明、織ヒカル、燕沢凛桜、北嶺真帆、砂金美作、葎イクルの8名が地面に座り込んでいた。 「…はい?おい!てめぇらどうなってんだ!?俺様さっきまで仕事してたはずだぞ!」 「ああああ!ちょうどいい所で!!!フラグが折れたァァァ!」 「おやぁ~?ここはユグドラシルですかねぇ~?」 「これは…そうそうたるメンバーだな」 桐石登也は、8人を見て思わず笑った。 これだけいれば百人力というものだろう。 そして。 「ヒカル~!!本物カヨ!?」 「ヒカルっ!」 「え?俺なんで…?は?イクルに…維胡琉先輩!?」 操られていた水鏡流星が、殺害したはずの織ヒカル。 彼がそこにいたのだ。 ―アドラメレクの力で、死者も貴様達の同行者として呼び出されている。総勢20名の同行者と共に、全ての階層を攻略し、立ちはだかる敵を倒し、アドラメレクの座す終わりと始まりの地へと向かう事が貴様達の目的となる。降りたい者は我に言え。現実世界に戻してやろう。ただし、その者はもう資格は失い、この最終試練への協力はできない。ここにいる者達がハミルトンを止めるか、止められず世界ごと巻き込み死ぬ時までゆっくりと残りの人生を謳歌するがいい― 「ちなみに、私は抜けられないよね?」 ―当然だ。貴様が抜けるという事は、最終試練の放棄を意味する― やっぱりね、と茜はため息をついた。 ―2月末日。およそ2カ月間、アドラメレクは待つといった。つまりそれまでにアドラメレクを倒せない限り、ハミルトンの発動は食い止められず、現実世界もろともこの世界は滅ぶ。今日は12月27日。1月1日まで待ってやろう。どの道、正式な攻略開始は1月1日からになる。そこで、他の者達は答えを出すがいい。最終試練に挑むかどうかを― 貴方達の前に、沢山の食料品が出現した。 全く調理していない、生のままの肉が、野菜が、魚が。 ―滅びの時を迎えるまでの食については、我がユグドラシルの力を以って提供してやろう― ☆☆☆ 拠点となったユグドラシルの一角に、上条が用意したスペース、アイテムショップがある。 彼だけ召喚された時、土御門家が所有する物資と共にここに召喚されたのだ。 「はぁ~、ババアは消えろ。どうしても売ってほしいなら、煌石1個10万円、ベッドの日用品は100万円。現金で」 「よし、揚羽さんこいつ殺そう」 「おっけー!」 「ちょっと、なんだよ!?僕のものだぞ!金払えよババア共!おい、来るなよ!うわあああ」 多少高いままだったが、それでもギルドで提供していた煌石等は定価よりちょっと高いくらいに、日用品も定価で。 茜と烏月揚羽の女子力で、交渉は成立した。 ☆☆☆ 拠点となったユグドラシルの一角に、貴方達が神崎信との最終決戦で使った飛行船、エリュシオンがあった。 「ここの座席を使えば、全員寝泊りできそうですねェ~」 「そうッスね、多少体は痛くなると思うッスけど」 「伍代さんもお留守みたい?」 砂金とヒカル、そして凛桜はエリュシオンの調査をしていた。 特に魔物などはおらず、寝泊りにも多少は体を痛くするだろうができるスペースはある。 肝心のエリュシオンの飛行装置などは、分かる者がいなかったため動かすことができなかったが…。 「でもこれ、掃除とか誰がするッスか…?」 「…リオは嫌よ」 こうして、エリア探索に行けない者達で交代して掃除を行う事になったのだった…。 ☆☆☆ 「いやぁ~興味深いですねぇ~!見たこともない魔物がたっぷり!」 「城ヶ崎さん、これ見て…!」 「おぉ!北嶺さんこれはすごいですよ~!絶滅したはずのむいむいです~!」 「ずいぶん盛り上がってんな…」 志島武生は、城ヶ崎と真帆と共に拠点となったユグドラシルの一角にある書庫へ来ていた。 「ここで、今まであったことを記録しておきますからね~。魔物の生態も知りたければ来てください~」 ☆☆☆ 拠点となったユグドラシルの一角に、だだっ広いだけの場所があった。 「おっしゃ、ここは訓練とかするのにちょうどいいな」 佐治はそこを眺めて一人呟いた。 「しかしなぁ、上条のアホはともかく、なんで俺様や城ヶ﨑がエリアに向かえねぇのかなぁ」 佐治が同行メンバーとして粋がっていた時、エストレアの一言を思い出す。 ―同行者は20名。しかし、佐治宗一郎、上条森羅、城ヶ崎憲明の3名は非同行者となる。同行者20名以外にも、幾人かの非同行者も囚われている。救出すると良いだろう。なお、非同行者はアドラメレクの力によりこの拠点より外には出れぬ― と。つまり佐治は既に戦力外なのだ。 「ふざけんなっつーの!だったらガキ共強くして、アドラメレクぶっ倒す!!!」 こうして、アドラメレクの、竜の戦士の最終試練が始まったのだった――。
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朝日を意味する陽光がセシルへと降り注ぐ。未だぼやけたままの意識でセシルは声を上げる 「ここは」 自問自答の答えはすぐに出た。 見慣れた天井と小奇麗に整頓された様相。壁に掛った時計が規則正しい音を立てながら時を刻んでいる。 「僕の部屋だ」 事実を言葉にしつつ、過去の出来事を思い起こす。 「助かったんだよな……」 崩壊するゾットから脱出する為にローザの手を取った。そこまでは覚えていた。 「……みんなは! 何処だ?」 記憶が鮮明になってきた途端、今度は不安が押し寄せてきた。 目覚めると自分一人。以前にも全く同じような状況があった…… 「いや違う」 しかし即座にそれが杞憂だという事に気づく。それと同時に新たな疑問が湧き上がる。 「此処はバロンの城の中だ……確か僕はゾットが崩れそうな所を脱出しようと思ってローザの手をとった つまりは助かったって事だ。でもどうして僕はここに……?」 少しばかりの間、一人ごちて考えを張り巡らす。しかし、当然の事ながら何か新しい考えが浮かぶわけでは 無かったし、先ほどからの疑問が解決される事も無かった。 ここはやはり自分以外の当事者――ローザとカイン。二人に話を聞いてみるべきだろう。 それに三人で一緒に話すのはバロンを出てから初めての事だ。いい機会だろう。
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「ところでシド」 話題を変えるつもりでもセシルは切り出した。 「ん……どうした?」 特に詮索する様子もなくシドが聞き返す。先程までの重い空気を引きずっている様子も感じられない。 「そういえばあの娘が僕の事を王って言ってたんだ」 「あの娘? ああ、メイドの穣ちゃんか?」 セシルは頷く。 「どういう事? 町の方では何も言われなかったけど……」 自分が王と言われた事に対しては、心の片隅で考えている内になんとなくだが理解は出来た。 現在、バロン国は王が存在しない状態である。正確には王は殺された。いつかは分からぬがゴルベーザの手によって。 そして四天王の一人である水のカイナッツォが影武者として王に即位していた。この間までは…… カイナッツォを打倒した後、セシルは本当の王――自分を育ててくれた心優しき騎士が何処かで生きてはいないかと 思った。 しかし、その淡い期待はすぐさまに打ち砕かれた。城の地下深く、セシルは確かに王――父と呼べる者の声を確かに聞いた。 王はもうこの世にはいない。バロンという巨大な国家を治めるには指導者の存在は必要不可欠であろう。 今はまだいい。ゴルベーザという確固たる敵が存在し、各国も一致団結してゴルベーザと戦うはずだ。しかしその戦いが 終わった時、バロンは再び一つの国家としての道を再び歩む事になる。そうなれば誰かが指導者として国を導いていかなければ ならない。 「僕が王になれって事?」 考えてみれば、無理もない話であった。幼い頃に王に拾われたセシルは、王の寵愛を受けて育った。自賛になるがセシル自身も 王の期待に応えれるように努力してきたつもりである。 今亡き先代王に近しく育ったセシルに後継ぎの座を期待する者がいても不思議ではない。 「まだ確定事項ではない」 シドが口を挟む。 「王が偽物であった事。そして王が既にいない事を知っているのも知っているのもごく城のごく僅かな者だけだ」 混乱を避ける為であろう。だから、町の方では何も言われなかったのだ。 「とはいっても完全に賛同している者ばかりという訳ではない。セシル、お前がこれからどうしていくか。それにお前さん自身に 自らなるべき意思がないとどうすることもできんしな」 最終的にはセシルの判断に任せる事にはなっているようだ。 「まだ目的地には到着しないんだろう?」 話題を切り替えシドに尋ねる。彼は黙って頷いた。 今向かっている行先は伝えられていない。だが、其処にはカインがいるらしい。 「僕も少し休んでくるよ。部屋を使わせてもらうよ」 <僕も>というのは<ローザも>という事である。町に迎えに行って一緒に飛空挺に乗った後、彼女はすぐに眠りについたのだ。 ローザも疲れているのだろう。セシルと同じく。 それじゃあと軽い挨拶をした後、セシルは甲板を後にた。 自分が王になるかもしれない。父のように尊敬していた王の後を継ぐことが嬉しくない訳ではない。身寄りのない自分のような者が 王になる事に反対する者もいるだろう。しかし、それに対して謙遜や躊躇いを感じる事はないし、反対する者を納得させる自信もある。 しかし、迫る未来に対して覚悟をするには多少の準備が必要だ。それがどんなに大きなものでも小さなものでも、人は悩むのである。
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「そこが不思議なところなのだよ!」 だがシドは特に気にとめた様子もなかった。それどころかセシルの問いに待ってましたとばかりに口を開く。 「失意のまま儂とヤンはバロンへと帰る事となった……お前達三人はあのまゾットの爆発に巻き込まれたと思っていた。そう思うととても 悲しかったわ。あの老いぼれ――テラが死んだ時は悔しさで胸が一杯だったのだが、今回は純粋な悲しさが心を支配していた」 「…………」 シドがローザをカインを……そしてセシルをどれ程大事に思っているかを理解するには充分すぎる程の言葉であった。ゾットで待つ時も 崩壊寸前までセシル達を待っていてくれたのであろう。セシル達を残して先に飛び立つ時には相当辛い気持ちであっただろう。 ヤンがいなかったとしたら、そのまま爆発するゾットに身を委ねていたであろう。 「しかしだ、信じられない事にバロン城へと着艦した儂とヤンを迎えたのはカインであったのだ……」 「つまり僕たち三人はシドとヤンよりも先にバロンに到着していたって事か」 シドの説明はまだ不十分であったが、おぼろげながらに存在した記憶が補ってくれた。 「ゾットが崩れ落ちる時にローザが脱出魔法を唱えていた。僕とカインは慌ててその手を掴んだ」 今度はセシルが説明する側に回る。 「ここからはおそらく推測であるんだけど……脱出する際にローザが指定した場所がバロンなんだろう。下手にゾットに近い場所に転移すると 危ないからだろうね。だから僕たちは一瞬でバロンまで転移した」 ならば何故バロンなのか。別にゾットから遠ければ何処でもいいのではないか? そういった質問は野暮であろう。 ローザにとって最も楽しい思い出はこのバロン城に存在していた。例え、今が辛くても、未来が閉ざされたとしても、過去の想いだけは いつまでも変わることなく残り続ける。 「そうであったか」 シドは特に異論も無く納得したように頷き、続ける。 「しかしそれでお前達が無事なのは良かったのだが、また一つ問題があったのだ。セシル――お前さんだけが眠りから覚めなかったのだ」 再び語り手がセシルからシドへと移る。 「僕が?」 「ああ、儂もローザも少し心配したぞ」 「そうか……」
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「久しぶりだな。セシル」 山肌が多数を占めるこの島に飛空挺を止めるのはえらく難儀な事であった。 なんとか平坦な地形を見つけ出し、着艦すると此方に向かってやってくる声が一つ。 その声は着艦の苦労と疲労を打ち消すには充分すぎるものであった。 「カイン」 言葉通り、しばらくであったカインの声はセシルもよく見知ったものであった。 「僕も、久し振りだね」 会話を続けさせつつも、セシルはカインの姿をまじまじと観察した。 友を信用していない訳ではない。だがゴルベーザに操られていた頃のカインの印象は未だセシルの頭には残っていた。 もしかするとカインが正常に戻ったのは幻であったのではないか? ふいにそんな疑問がよぎったのだ。 「何所まで知っている?」 だが、セシルの疑惑の視線を別段気にする様子も無く、カインは言葉を続ける。 「え……?」 冷静な面持ちを維持したままのカインに自分の考えが杞憂であった事を悟る。 「まだ何も知らないようだな」 曖昧な返事のまま沈黙しているとカインから再び口を開いた。 「クリスタルが四つがゴルベーザの手に渡った。それは分かっているな?」 「ああ」 どうやら自分は無駄な事を考えていたようだ。先ほどまでの考えを頭の隅に追いやる。 「これで全てのクリスタルが奴の手に渡ったことになる」 ゴルベーザの目的が何であるかはまだ分からない。だが、奴は血眼になってクリスタルを探してそれを手中に収めようとしていた。 それだけに関していえば奴の目的は成就されてしまった。状況的に見てセシル達は負けているのだ。 「いや、クリスタルは四つしか揃っていない」 会話の流れ上、あまり意味なく呟いた言葉であったが即座に否定されて驚く。 「どういう事?」 「簡単な話だ。クリスタルは四つで全てではない」 続く言葉を待った。 「世の中何事に関しても表と裏、二つの側面が用意されている。そう何事にもだ……それはクリスタルとしても 例外ではない……」 「表と裏……」 セシルも反芻する。 自分にも暗黒騎士という一面があった。そして今の自分であるパラディンという一面がある。 このように人は誰しも今の自分以外の影と呼べる存在を従えている。 その影は自らで否定しようにもする事が出来ないもの。光があれば影もある。それは何事も逆らえぬ摂理とでも言うのだろうか。 「思ったより受け入れがいいようだ……安心したぞ」 静かに思考するセシルを見ての感想であろう。 「ああ。共感できる所が多々あるからね」 「ふ……まあ今はそれだけ分かっていればいい。ここから先は場所を移してから話す事にしよう。俺達だけで話す事は出来ん」 そう言って踵を返す。 「ローザも連れて来い……」 少しどよめきながらカインは言った。 「分かった」
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実体験での経験というものは言葉で説明されただけでは絶対に分からないものが見えてくる。 幼い頃に誰もが聞かされた有り触れた講釈である。しかしあながち的外れな意見ではないだろう。 今現在のセシルは改めてその言葉を痛感した。 「これは?」 久し振りに乗った飛空挺の甲板から見下ろす地面は明らかな変化があった。 バロン国に周辺に広がる広大な平野。赤き翼隊長として眺めたその場所は、薄らと雲がかかった上空から見渡しても 見違う程はあり得ない新緑の緑一色の場所であった。 しかし、今のセシルが見下ろしている同場所はその様相を変えていた。視界を支配していた平野一面には幾つかの大きさの穴が ぽつぽつと散見された。 緑一色の場所に混ざった茶色い穴の数々は、やや不吉な雰囲気を演出していた。 「儂らが帰還する途中から既にこの有り様であった」 ゾットからという意味であろう。つまりはあのゾットの一連が眼下での風景の原因である事は容易に想像できた。 (あの時、あの場所には今の世界で起こっている大事な事が全て起こっていた……) 何所か別の場所でそれ以上の何かがあったなど到底考えられない。 そう考えると、セシルにはすぐにでも原因が分かった。おそらくシドも既に分かっているのであろう。 「メテオ」 シドに聞こるかどうかわからない程の小さな声で呟いた。 「…………」 シドは無言であった。今のセシルの声が聞えていなかったのだろうか? 例え聞えていたとしても彼は無言を 貫いていたであろう。 復讐の為に己の命を全てかけた男――賢者テラ。彼が最期に唱えた最強の黒魔法メテオ。 その呪文はゴルベーザに深手を負わせた。それと同時に、地上の幾多もの場所を傷つけた…… 結果がどうであれテラは後悔はしていない。彼は己の消滅の際にそう残した。 「それで、各地の被害はどうなってるの?」 「幸いにも人口が密集している場所に大きな被害は出ていない。ヤンの方からも特にこれといった報告は入ってない……」 ならばこの結果すらも受け入れたのだろうか? そもそもテラはメテオの詠唱がこのような惨状を引き起こす事を知っていたのであろうか? もし知らなかったら後悔したのだろうか? 知っていたとしたら、全て分かっていてメテオを行使したのか。 「ヤンもこの事を知った時は慌てておったぞ。一時国に帰ったのもファブールを心配しての事らしいからの」 いずれにせよテラに対しての数多くの質問の回答を得ることは不可能になってしまった。 「まあ大事に至らなくて本当に良かったわ、本当に……」 今セシル達に出来る事。少しでも状況を確認して、被害の様子を知る事しかなかった。
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「来おったかーセシル!」 バロンが誇った最強の飛空挺部隊<赤い翼>を格納するための広きカタパルトにシドの銅鑼声が響き渡った。 「メイドの穣ちゃんから聞いたぞ。良かったな」 「シド……僕は一体? あれからどうなったっていうんだ?」 あれからとはゾット以降という意味である。 「どこから話していいものか……」 セシルの疑問を把握すると、シドは急に難しい顔になった。 「まあ、儂一人の口からでは全てを話すことは難しいのだが……あの時――儂とヤンは先に飛空挺に言きお前達が来るのを待った。 この事はお前も覚えているであろう?」 セシルは黙って頷いた。本心ではもっと色々と質問したい事があったのだが、少しでも事情を知っているであろうシドの話を全て聞いて からでも遅くはないと判断した。 「だが……お前とカイン、そしてローザの三人はいくら時間が経っても戻ってはこなかった。やがてゾットの塔の崩壊が儂らのいる場所に まで届いてきた。このままでは儂らも危ない……ギリギリまで待ったが、そう判断して先に飛空挺で脱出する事になった……すまない!」 待つ者の思考がどうであれ、結果的にセシルを見捨ててしまった事に変わりはない。シドはその事を詫びてるのであろう。 「別に構わないよシド。そのまま一緒に崩壊に巻き込まれてしまった方が僕としても不本意だよ。それより……」 シドの謝罪を込めた告白はセシルの疑問に対する完全なる答えにはなってはいなかった。それどころかまた一つ新たな疑問が増えるだけであった。 「その、僕たちを置いて先に行ってしまったって事は当然ながら、僕はそのままゾットに残されてしまった事になる。だとしたら何故僕は 此処にいるんだ……?」 セシルの疑問は先程からシドが気にしている事を再び蒸し返すものである。一応慎重に言葉を選び質問にしてみたつもりなのだが大丈夫であろうか。
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「失礼します」 結論を出し横になった体を起こそうとした瞬間、部屋の外から入室の合図を告げる声が聞こえた。 (ローザか?) 扉越しからでも曇ることなく聞こえる澄み切った声は間違い無く女性の者であった。 (違うな……) 即座に自分の第一案を否定した。声の色はまだあどけなさが残りきっていた。 「あ……お目覚めになられましたか!」 声主の少女――セシルの部屋を任された幼さの残るメイドは入室と共に驚きの声を上げた。 「失礼しました! 返事も待たずに勝手に入ってしまって……でも良かったです」 最後の方は敬語から安堵の息を感じさせる言葉になっていた。 「もうこのままずっと起きてこないものかと思いました……」 そう言って彼女は瞳に涙を浮かべた。 「私の様な者がセシル様の心配をするなんて失礼かもしれませんが……」 「そんな事ないよ……」 従者という身寄りから来るのか、慌てふためく彼女の頭をセシルは優しく撫でた。 「あ、の……セシル様……!」 セシルの行為は彼女に安心を与えるよりも先に混乱を与えてしまったようだ。 「これは一体……どういう事ですか!」 緊張しどぎまぎする彼女は少女そのものであった。 「あ……いや、すまない」 純真な優しさを表したつもりであったのだが逆効果であったのだろう。 「いえ……ご好意は大変嬉しいのですが、いえ!」 慌てふためき彼女は自分頬をぱんと一手叩いた。 「とにかく、良かったです。私、皆さんに伝えてきますね……セシル王がお目覚めになられたと……」 「え?」 急に話題を変え、そそくさと退出しようとする彼女を見送りつつ、セシルの疑問は更に募ることとなった。 (聞き間違いか……?) (否、彼女は確かに言った) (僕の聞き間違えなんかじゃない) 思考の中で彼女の言葉を何度か反照する。疑問が確信へと変わる。 (彼女は間違いなく僕の事をこう言った。セシル「王」だと――)
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アガルトの町。バロン国の真南に位置するやや大きめな島に存在する町。 島の面積の過半数が山岳で構成されるその場所は、ミシディア近くにあるミスリルの町のように特殊鉱石の貿易で栄えている わけでもない。ましてやバロンのように国家としての形態を作っている訳でもない。 水の都トロイアのような美しさもなく、観光目的で此処を訪れるものも皆無である。島中で一番栄えている小さな町に建てられた 武器屋、防具屋に並ぶ商品も平凡な品揃えだ。 一見して何の特色も無い平凡なこの島を訪れる人は段々と少なくなり、いつの間にか人々から忘れ去られる場所となった。 ある程度の面積を有している事から地図上から消されることは無かったし、「アガルト」という名前も存在し続けた。 しかし、学問においても政治的な思想においても、この島は誰にも触れることはしなかった。 学校の教育でも教えなかったし外交でも気に留めるものはいない。この場所に興味を示す学者は殆ど存在しなかったし、戦場に なる事もなかった。 セシル自体も赤き翼隊長としてこの場所の存在は知っていたし、島の上を飛空挺で通過する事も何度かあった。 しかし、当然の事ながらこの島に注目を向けた時は無かった。 シドの飛空挺に連れられてやってきたのは、まさかのそんな場所であったのだ。